話題の読解力の向上に催眠技術で挑む

昨年2月に数学者の新井紀子氏の『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』が発売されてから、読解力の問題が話題に上がるようになりました。彼女は人工知能に東大受験をさせる「東ロボくんプロジェクト」に従事して、人工知能が意味解釈をしないことから、国語・英語などの読解力を問う問題に対応できず、受験を諦めることになりました。しかし、東大には合格しなくても、MARCHレベルの大学には(学部によっては)十分合格し得ることから、7割近くの受験生より人工知能の方が読解力があることが分かったというのです。

また橘玲氏が著作の中で触れたOECDが行なっている国際成人力調査の結果、日本は世界の中でもダントツの好成績である反面、それでも「3人に1人は日本語を読んで理解することができない」・「10人に1人しかパソコンで基本的な作業を実行できない」などと判明したと言われています。このような状況を受け、政府も「知識基盤社会」の到来に対応するとしています。

新井紀子氏の研究に拠れば、単に読書量が多くても読解力が伸びる訳ではありません。普通に暮らしているだけでは高校以降読解力は伸びることがありません。この状態は最近発生したのではなく、現在の成人でも一様に低読解力の人は多数存在することも分かっています。

読解力は注意深く文章の構成や意味を理解しながら読み取る力です。伸ばそうとすれば、その「鍛練」が必要になります。催眠技術で読解力を伸ばすとすれば、読解そのものを「文章の意味をきちんと理解しないと落ち着かない」と言った暗示で促したり、「文章を読むのが楽しい。長く読んでも全然辛くない」と言った集中力維持の暗示を入れたりするものとなることでしょう。「なぜ」・「どうして」と疑問を持ちながら読む習慣づけを暗示で行なうこともできます。

仕事を人工知能に奪われるという議論がよく為されています。その人工知能が人間に及ばないとされる「読解力」を伸ばすことが催眠技術でも可能なのです。