“恐竜の尻尾の中に頭を探す”催眠商売

独立起業のためにはブランディングが必要だと今時のマーケッターの人々は口を揃えます。しかし、屋号やロゴがブランドとして認知されるのは、実商売の商品やサービスの価値が優れているものであり続けた結果でしかありません。お金や労力を相応に掛ければ、今時SNSで一定の注目を短期間集めることはできるでしょう。けれども、実態を伴わないブランドはあっという間に消費され尽くされ、忘れ去られることと思います。

催眠技術で独立して食べて行けるかという問いを投げられることがあります。そこには、自分がやりたい形のサービスを一般の人々に広く売っていくような、所謂「ブランディング」が前提となっていることが多いように感じます。そして、前述の通り、自分のやりたいサービスを欲しがるお客様を長期的に集め続けるのは至難の業です。

橘玲の『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』には、その実現策が書かれています。「恐竜の尻尾の中に頭を探せ」です。これは、一時期マーケティング用語としてとても流行った「ロングテール(長いしっぽ)」の考え方の応用です。ロングテールの中の小さなニッチ市場で圧倒的な支持を得られるような商売をしなさいということです。

小さな市場の作り方ならたくさんあります。(海外の事例でみる限り)原理的には鬱にも癌にも対応できて、自己啓発的なことも幾らでもできるヒプノセラピーは、やれることが多過ぎて非常に売りにくいサービスです。思考実験としてヒプノセラピーの売り方を考えてみましょう。

戦前の日本では乳児の夜泣きや癇癪などのことを「疳の虫(かんのむし)」と呼んでいましたが、これに対して、法規制の下で霊術師などと名前と形態を変えた催眠術師が「虫切り」とか「虫封じ」と呼ばれた施術を行なっていました。夜泣きは今でも存在しますから、「夜泣き専門相談。夜6時開業のヒプノセラピー」などを住宅街のど真ん中で始めれば、間違いなくその地域のそのニーズを抱える市場において、「恐竜の尻尾の中の頭」を捉えることができるように思えます。

このようにニッチな市場を設定し、そのニーズに肌理細かく対応することで、ブランドを強固なものにしていくことが、催眠施術の仕事でも可能なのです。

☆関連書籍:『本気に催眠術師になりたくなったあなたへ 催眠五年目の感想文 下巻
☆参考書籍:『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法