催眠技術で緑内障の視野欠損は治せるか

1980年代後半。私が米国の大学で学んだ心理学の教科書に、バイオフィードバックの項目があり、そこでは、身体の特定部位の血流量を意識的に増やすことができることを示した実験が紹介されていたのを覚えています。実験は耳朶の光透過の測定の形で行われていました。

耳朶は組織が薄く、毛細血管が豊富に通っているため、光が透過しやすい部位です。血液中のヘモグロビンには、赤色光(波長約660nm)を吸収し、近赤外光(波長約800nm以上)を透過させやすい特性があるため、赤色LEDライトを耳朶に当てると、血液成分に吸収されなかった光だけが透過するので、耳たぶが赤く光って見えます。この光透過の度合いから血流量の変化を測定することが可能で、拍動まで検知することができます。

この測定状況を作っておき、「耳朶にどんどん血が集まって、ドクドクと脈打って流れている」といったイメージを強く持つようにすると、実際に血流量が上がってきて、光透過率がさがることが実験によって証明されたとする心理学の教科書のコラム記事でした。これは自己暗示の実験と見ることができます。

当ブログ記事『動脈をリラックスさせるイメージで高血圧を治す』でも、催眠状態の患者に暗示で患者の動脈が軟化して伸縮性が増している状態のイメージを描かせることで、血圧を下げることに成功している事例を紹介しています。このように見ると、血流量のコントロールは初歩的な自己暗示の技術で十分に可能であるように思えてきます。

眼科医の深作秀春の著書『緑内障の真実 最高の眼科医が「謎と最新治療」に迫る』では、重度の緑内障で視野が既に大きく欠損してしまった患者に対して、眼圧を下げるのと並行して、男性用ED薬と同成分のサプリを処方して血流量を上げ治療した事例が登場します。一般に緑内障の視野欠損は進行を食い止めるのが精一杯で回復は無理というのが常識です。しかし、血流量を上げるサプリの処方で、欠損した視野部分において明るさを認識できる程度には回復させたと書かれています。

自己暗示で血流量はコントロールしやすい訳ですから、発見が遅れて右目の視野を一部分欠損させてしまった私は、催眠技術で視野欠損の回復を試みてみたいと考えたのでした。実際に半年近く事あるごとに暗示を入れ続けてみたところ、定期視野チェックで僅かな視野欠損部位の縮小が一応確認できました。

成瀬悟策が共著者である『自己催眠』でも(この領域での研究はまだ十分ではないとの前提付きですが)、緑内障治療も「自己催眠の臨床的利用」の章に登場します。その治療に用いる暗示は上に述べたような網膜の血流量コントロールであったのかもしれません。

☆参考書籍:『緑内障の真実 最高の眼科医が「謎と最新治療」に迫る