夜9時過ぎには炭水化物を摂らないように対象者を説得して、ダイエットに成功させたとします。対象者はこちらの助言や作業の意義を認識していて当然です。
ところが、催眠技術で無意識に暗示を書き込むと、本人が意識していない部分で行動パターンのプログラムが書き換わります。その結果、“意識”の方は、「自分は最初からこういうことがやろうと思えばすぐできた」などと、新たな自分の行動に合わせて、認識を変化させてしまいます。
吉田かずお先生が、「『試験のことを考えると緊張で手が震えて、包丁が持てない』と困り果てて俺を訪ねて来た調理師の見習いに暗示を入れたんだ。試験の後に『どうでしたか』と電話したら、『今忙しいからあとで掛けてくれ』だそうだ。暗示がバッチリ効いたんだろう」と言っていたことがあります。
もちろん、変化を感じた周囲の人物が、「変わったね」などと対象者に声をかけることはあるでしょうし、以前の困っていた自分の記憶は残っています。しかし、無意識からの変化によって、以前の自分が気にならなくなってしまうのです。
吉田先生は、「催眠術師は世の中で一番感謝されない仕事」と言います。上手く掛ければ掛けるほど、本人はそれが前からそうであったかのような感覚になります。これでは、リピートもしてくれないでしょうし、口コミも発生しないでしょう。
多くの催眠術師が、催眠術の手法を教えるか、演芸を行なうかのどちらかで稼ぎたがる理由の一つは、もしかすると、掛けた相手から感謝されないことなのかもしれません。
☆参考書籍『催眠の謎』
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