若い女性が働くガールズバーなどの店舗経営に関わる人物から、催眠施術の可能性について尋ねられたことがあります。その質問内容はそうした店舗に集まってくるスタッフたちは、ほぼ皆一様に「低い自己肯定感・強い承認欲求・強い疎外感」の三重苦を抱えているので、それを催眠技術で解消とかせめて緩和できるかというお話でした。
実はこの手のご相談は初めてのことではありません。キャバクラやコンカフェ、そして一部風俗系の仕事に就く女性スタッフで類似した精神状況について、直接ご本人からご依頼を受け施術をしたことが何度もあります。
亡き吉田かずお先生は、「後催眠暗示で書き込めるのは1回で2つまでだ」とよく仰っていました。吉田先生の経験則を解釈すると、後催眠暗示を受け容れるキャッシュメモリのような機能が脳に存在し、睡眠によってそこに書き込まれた暗示が無意識に定着することになるようで、そのキャッシュメモリの暗示の容量が2件であると先生は言っているのです。
一般に「低い自己肯定感」に対して「自信が湧いてくる」などの暗示を入れるのが定番ですが、三重苦状態ですと、強い疎外感も抱えているので「そんな自分を分かってくれる人間はいない」とネガティブに受け取ります。その疎外感を緩和しようと「自分をみんな分かってくれる」などの暗示を入れようとしても、自己肯定感が低いので「ダメな自分を分かってもらったらもっとひどいことになる」と思い込んでしまいます。
このような状況が続くと暗示を書き込んでも三重苦の別の要素が足を引っ張りなかなか症状が改善しません。そんな懊悩を抱えた状況で「誰かに必要とされたい」、「どこかに居場所が欲しい」と承認欲求が募って行きますが、特にそれが満たされる方策が新たに見つかる訳でもなければ、余計改善が遠のきます。
さらに、読解力が低い四重苦状態になると、暗示の文章表現も極めて制限されてしまいますし、構造的に暗示を組み立てて入れていくことが困難になります。読解力の低さは、こうしたタイプの苦悩を抱える中で女子大生でも見られる傾向で、必ずしも学歴が高いと解決しやすい訳ではありません。その結果、シチュエーションを読み取ることも苦手なので、誰か同世代の憧れの人物をロールモデルにして、吉田先生も得意だった「美女催眠」の原理で、ロールモデルのような思考や生き方を実現するように軌道修正することも困難です。
究極の「三重苦」の癒しは、ホストや地下アイドルなどの「推し」による「お前は最高だ(抗「低自己肯定感」)」、「いつでも俺がそばにいる(抗「強承認欲求」)」、「俺はお前のことを一番よく分かっている(抗「強疎外感」)」なのですが、それらは通常単なるビジネスの囲い込み手法でしかありません。
三つの要素の中でどれかが突出しているケースであれば、それを集中的に緩和することから突破口が開きますが、三つがどれも無視できない状況だと、そうもいきません。
短期的な決着が難しいのであれば、吉田先生のように10回近い施術を重ねてまずは催眠施術者との施術におけるラポール形成をどっぷり深めてしまうという方法論が有効なはずですが、そのためには、本人がその有用性を理解して、施術を受けることを決断したうえで、その費用を継続的に工面しなくてはならなくなります。
本人にとっての何か強烈な印象を与える、自己肯定感を引き上げる出来事や承認欲求を満たす出来事があれば、その体験的記憶をベースに一気に暗示で三重苦を消し去ることもできるでしょう。しかし、それは(考えにくいことですが)推しが善意でその女性を救うためにする催眠セックスとか、被災地ボランティアで心を無にして作業して多くの人々から強烈な感謝を受けるとか、それぐらいの劇的な精神的インパクトを伴う経験を基にして、暗示を書き込めなければ、短期の劇的な改善はかなり困難になることが多くなるだろうと考えられます。
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