吉田式催眠観による自己催眠の四分類

吉田かずお先生が自己催眠という言葉を使う時、含まれる事象が広範なので、そのお話の文脈からどういったことを指しているのかを判断する必要がありました。吉田先生が自己催眠という概念の中に含めているのは、大別すると以下の四つです。

■瞑想系自己催眠
 禅やヨガなどで行なわれる瞑想の状態を指します。最近企業研修などでも採用されることがあるマインドフルネス瞑想もこの範疇ですし、吉田先生が若い頃に学んでいた太気拳の修行時の「立禅」もここに含まれます。

■修行・行系自己催眠
 密教や古武道、山岳信仰などでよく知られた滝行や水垢離(みずごり)など、いろいろな形で無の心を生じさせる修行が含まれます。また、華道や茶道、各種の芸道や武道全般の「道」世界での無心や没我の心境などもここに含まれています。

■自己暗示系自己催眠
 上の二つの類型が心を鎮めることを主な目的にしているのに対して、直接的に自身に暗示を書き込むことを目的とした自己催眠の類型です。最近の「自分を変える」流行に伴い注目されている分野かもしれません。中村天風の「自己暗示法」も有名です。

■フロー・ゾーン系自己催眠
 スポーツ活動や芸術活動・科学研究活動などへの没頭状態を一括りにしています。スポーツ選手や芸術家・科学者は「催眠状態」を目指してそうなるのではなく、それまで彼らの無意識に蓄積された専門分野のあらゆる知識や経験の中から、最高のアウトプット・パターンや創造的な組み合わせを出力するための自己催眠状態です。

吉田式催眠観では没頭や無心といった変性意識状態も対象にして催眠技術を考えますが、その背景にはこうした広い範囲の自己催眠状態の認識もあるのです。

☆参考書籍『自己催眠