「自律訓練法」と対を成す自己催眠法「自律運動法」

自己催眠法としての「自律訓練法」はよく知られていますが、「自律運動法」はあまり知られていない言葉です。催眠術師の吉峯幸太郎の著書『催眠のすすめ』の中に、彼の師匠にあたる守部昭夫が案出した自己催眠法として自律運動法が登場します。

そこでは、「自律訓練法」は静的自己催眠であるのに対して、「自律運動法」は動的自己催眠と対比されています。原理は「体が、勝手に動き出して、ストレスを運動発散するとともに、筋肉の凝り、バランスの崩れを修正してくれる」ものとされています。つまり、自律訓練法を行なう前の段階のカラダの調整を行なうことになるので、これら二つは対になっていると表現されているのです。

具体的な方法を簡単にまとめると…

1. 布団にあおむけに寝る
2. 次に「タコ」をイメージする
3. タコのようにのびのび手足を動かしながら、「体が自由に動く、のびのび動く」と自己暗示を入れる
4. 体がのびのび動き始めたら、「あとは自由に動く!伸びたかったら伸びる、曲げたかったら曲げる、ひねりたかったらひねる。
姿勢も自由、動きも自由、好きなようにのびのび動く!」と自己暗示を入れる。
内面から動きが出てくるまで繰り返し自己暗示すると、意識的な動きとは異なる自律運動独特の動きが出てくる。

十~十五分継続するとかなり体がスッキリしてくるので、そこから「動きが止まる」と強く自己暗示して、自律訓練法や弛緩法に移行する。

という流れになっています。「スワイショウ」も体の緊張を解き、軽い変性意識状態を作る動きであることが知られていますが、自律運動法はより催眠誘導的であることが分かります。実は同書ではその後再び「自律運動法」が今度は深化法として登場します。

[引用文始まり]

浅い催眠状態に入った被験者に、次のように語りかける。
「これからは、創作ダンスと同じように、あなたの好きなように、手足を動かしましょう。心の中で、“身も心も開放、解放”と唱えながら自由に動けばいいですよ。伸びたければ伸びる、曲げたければ曲げる、ひねりたければひねる。あなたの好きなように、自由に動く、動く、動く…」
初めのうちは意識的に動いている被験者も、暗示がかかると、「自律運動」独特の動きが出てくる。
「自律運動」を十~十五分やらせておくと、ほとんどの人が、知覚支配の入口まで入ってしまう。こんな便利な深化法は他にない。究極の催眠深化法と言える。

[引用文終わり]

文中の自律運動が具体的にどんなものかの説明は登場しませんが、自律訓練法に比べ明らかに容易に実践でき、他者催眠にさえ応用できるのが自律運動法なのです。

☆参考書籍『催眠のすすめ