自律訓練法の6つの基本公式の前に必要な「背景公式」

自己催眠手法として非常に有名な自律訓練法は自己啓発系のビジネス書でも言及されるぐらいに有名ですが、そうした紹介における内容の説明は必ずしも十分なものではなく、誤解や誤った実践法が広まることにもつながっているように感じます。

6つの基本公式は「順番に行なっていく」とされており、まとめると以下のようになっています。

◆第1公式 重感覚暗示:「両腕・両脚が重たい」
 身体の重さを感じることでリラックスを促す。
◆第2公式 温感覚暗示:「両腕・両脚が温かい」
 血行をよくして体の温かさを感じ、身体を弛緩させる。
◆第3公式 心拍調節暗示:「心臓のリズムが規則正しい」
 心拍を安定させ、落ち着いた心の状態を作る。
◆第4公式 呼吸調整暗示:「呼吸が楽だ」
 自然で深い呼吸を促し、肺から副交感神経優位の状況を作る。
◆第5公式 内臓調整暗示:「お腹が温かい」
 内臓のリラックスと血流促進を進める。
◆第6公式 額部涼感覚暗示:「額が心地よく涼しい」
 精神的に落ち着きつつ覚醒を進める。

これらがきちんとできるようになってからは、各公式に1分ほど時間をかけ、全部で6分余りの工程で行なうのが良いとされています。ただこれをマスターする段階では、全公式にセットでチャンレンジするのではなく、公式を1つずつマスターして実感できるようにしていくアプローチが必要ですが、簡易なビジネス書での紹介などでは、こうした実践段階の説明が不足していることが多いのです。

また、この6つの公式の前段階に「背景公式」があることにもあまり言及されていません。6つの公式の中で執拗なほどにリラックス(/弛緩)が反復されていますが、そもそも6つの公式の暗示を有効にするために、先にリラックス状態が必要です。それが「背景公式」で「気持ちがとても落ち着いている」といった言葉を心の中で反芻するような作業を指します。

後に作家として有名になる松岡圭祐はその著書『読むだけでやせる: 驚異の催眠ダイエット』の中で詳細に自律訓練法を説明していますが、その説明の中では、他の公式同様に(「落ち着いてくる」や「落ち着いていく」ではなく「落ち着いている」という)完了形の表現にすることが重要であると述べています。この完了形表現も自律訓練法実践の重要なカギであるにもかかわらず、多くの簡便なビジネス書では言及されていないことが多いのです。

☆参考書籍:『読むだけでやせる: 驚異の催眠ダイエット