憧れの瞬間催眠術…

催眠術講座の上級コースに、よく「瞬間催眠術」と言うメニューがあります。受講者の関心が高いコースだといわれています。瞬間的に人を催眠状態にすることができるのか。答えは間違いなくイエスなのですが、普通は一定の条件があります。

まず考えられるのはラポール形成です。対象者が術者から催眠をかけられても良いと思っていることが前提でしょう。いきなり、赤の他人が誰かれ構わず催眠をかけられる訳ではありません。そんな手法が簡単に習えるなら、多々その類の犯罪が増えているはずです。

また、対象者が催眠経験者であることもかなり重要な条件でしょう。二度三度かけると、催眠誘導は極端に簡単になっていきます。催眠術初心者でも、ラポールがあり、既に何度か催眠をかけた相手なら、瞬間的な催眠誘導はかなり簡単にできるはずです。

実は、「無条件に瞬間的に催眠誘導する方法」も存在します。今では禁じ手とされている圧迫法です。頸部を圧迫して意識が飛んだ状態を作る技です。日本の古武道では、これに回頭法を加え柔道の投げ技のようにする誘導法もあったようです。この方法なら、相手が誰でも、出会いざまに催眠誘導できます。

瞬間催眠術への関心の多くは、好きな女性を意のままにしたいという男性によるものと聞きます。興味を抱いた女性に対して、いきなり投げ技をかけて「僕をとても好きになる」と成功裡に暗示を入れれば、刑務所に彼女が面会に来てくれることでしょう。

最近、瞬間催眠術として喧伝されるアームプルインダクションでさえ、無言で相手の目を凝視したり手を握って引っ張ったりすることが必要ですので、見ず知らずの女性にいきなり行なえば変態行為の域です。現代社会における“無条件瞬間催眠術”はかなり困難と言わざるを得ません。