よく聞かれる質問「催眠で人を殺せるか」(1)

催眠技術についてのよくある質問の中の一つに、「催眠で人を殺せるか」と言うものがあります。まず「暗示によって第三者を殺害し得るか」について考えてみましょう。答えはイエスです。

カルト教団による殺人事件などからも、実効上可能であることが分かりますが、幾つかの歴史的事実を根拠として、一般的通説は、“実際には極めて困難”と結論付けています。

1930年代のドイツのハイデルブルクで起きた、長年の主治医から悪意ある催眠をかけられた妻による夫の殺害未遂事件は代表的です。睡眠中の夫の頭に妻が催眠状態で銃を当てるにまで至っていますが、偶然、銃弾が装填されていず、未遂に終わりました。

1960年代にCIAによって画策された催眠状態の人物による三度に渡るカストロ殺害未遂事件も有名です。これもその場の状況にきちんと対応できずに未遂に終わったとされています。これらの事例を見ると、殺害と言う行為に至るまでのプロセスが複雑であると成功しないと言うだけのことに見えます。

本能的な倫理観は催眠技術で支配しにくい大脳古皮質が司っているため、催眠状態での殺害はできないのだと言う論点もあります。もともと軍経験者などで殺害に抵抗感が少なければ、暗示に対する抵抗もほとんどないものと考えられます。

一般人でも「悪霊を追い出すために身体を殴打し続けなければならない」と指示されて、被害者を撲殺させてしまうカルト教団の事例などを見れば、倫理観に沿った行為に置換すれば実行可能と分かるのです。

※当記事は、記事中で述べられた催眠実践事例を読者に薦める趣旨では決してありません。

☆参考書籍『催眠の謎