儲かる飲食店経営のコツ

ちょっと小奇麗なチェーンの飲食店などに行くと、その店舗チェーンの創業の物語やコンセプトが客席から見える壁やメニューの1ページに書かれていることがあります。創業者が「脱サラして苦労を重ねて、子供の頃から忘れられない味を作った」とか、「『ただいま』と家に帰るとかあちゃんが台所で作ってくれた懐かしいごはん」など、色々な物語があります。自チェーン店が展開している社会貢献事業の心温まる物語が黒板やリーフレットに書かれているようなケースもあります。

こうした付加価値となる物語も、お客様が支払う対価の一部である以上「商品」の一部です。フランスの哲学者であるボードリヤールは、こうした商品のことを「記号化商品」と呼び、お客様がこの記号価値を本来の実用価値以上に重視する消費のあり方を「記号消費」と呼びました。

しかし、飲食店の場合、このような物語や店内の内装やメニュー、価格帯や接客などから伝わってくる雰囲気やイメージは、単に記号価値であるとは決めつけられないものです。なぜなら、人間の味覚はかなり情報に左右されるからです。

テレビ番組の実験で、一流レストランのコース料理の中にスーパーで売っている食材を混ぜてみても、全員に近いお客様がその事実に全く気付かないという結果が出たこともあります。逆に素晴らしい食材を一流シェフに調理してもらっても、店は薄汚く、盛りつける皿も安物で、接客も最低では、それを堪能し美味しく感じることは難しいでしょう。

また、とても悲しいことを心に抱きながら取る食事は「味が満足にしない」とか「のどを通らない」などと言うことは誰しも経験があることでしょう。

催眠技術では感覚に影響を及ぼし、練りワサビを口に流し込んでも、全く辛さが気にならなくしたり、逆に何を口に入れてもワサビの味しかしないようにしたりすることもできます。食べ物の好き嫌いをなくす催眠施術はかなり定番であることからも分かるように、五感の中でも味覚はかなり調整しやすい感覚であることが知られています。

飲食店の商品記号化の取り組みは、実は他業種他業態におけるそれよりも、重大な価値を持っています。無意識に働きかけ味覚を操作するという意味で、実質的に軽い催眠効果と見做すことさえできるレベルなのです。

☆参考書籍:『消費社会の神話と構造』ジャン・ボードリヤール著