宅配便で届く “記憶” ! 映画『トランス』に見るイメージ利用法!

現代催眠術の巨人、ミルトン・エリクソンが得意とした催眠誘導法にイメージ利用法があります。日本では催眠術師の多くが、「エレベータ法」と呼ばれる、20階からエレベータで降下していくイメージを抱かせる誘導法を使うことがあります。この「エレベータ法」は厳密には、イメージ利用法の一例に過ぎません。

吉田かずお先生は、「20階建てのビルでエレベータに乗ったことがある人はどれぐらいいるんだ。対象者ごとに、抱きやすいイメージをその都度考えて暗示を用意した方がいいに決まっている」と仰います。

映画『トランス』では、現代米国のプロ催眠術師の仕事の様子が、細かく描かれています。明るい待合室の“患者”の様子も、白を基調とした広いスペースの施術室も、まるで歯医者のようなイメージです。そう言った日本とは異なるプロ催眠術師の仕事ぶり以上に、最も驚かされるのは、多彩なイメージ利用法の活用ぶりです。

特に、対象者が思い出せない「大事な鍵」のありかを催眠で思い出させようとする場面は圧巻です。催眠状態の対象者に、「居間にいると、ドアベルが鳴り、宅配便をあなたは受け取ります。それをテーブルの上に置き、紙をはがして箱を開けます…」とイメージさせていくのです。その宅配便の中身こそが、「大事な鍵の場所」だというのです。

単に、「直立後倒法」だの「音響法」だの、催眠誘導の方法論をこと細かく分類してみせる入門書は多数ありますが、こう言った具体的な使い方を学ぶ機会は限られています。やたら学びの多い映画でした。