「病は気から」という言葉が知られている通り、無意識は脳内の感情や思考のみならず身体全体を司るスーパーコンピュータですから、感情や思考、そして肉体の各部は密接につながっています。無意識を中央処理装置と見立てると、肉体全体の五感からのインプットを無意識が原初的に処理した結果が情動を発生させ、その情動から肉体の各種の反応が生まれて来ます。私達がその情動の変化や肉体の変化を感情や思考の形で意識できるのはその後です。
催眠術師の多湖輝の『催眠術入門 自分と他人の心を自在にあやつる心理術』の中に興味深い一節があります。
「心療医学のある研究報告によると、夫の浮気に悩む主婦を催眠誘導して、『いま、ご主人が浮気をしています』と暗示したところ、腸がギリギリとよじれだし、重症の腸捻転を起こしたという実例もあるくらいです。私は、以前、そのレントゲン写真を見せてもらいましたが、暗示の持つ力を、いまさらながら、知らされたような気がしました。(中略)
心臓病の人に、『いまあなたは、十二階から飛び下りました』と暗示するだけで、心拍数は急上昇し、ショック死させることも可能なのです。」
催眠状態にすると、無意識の純粋な働きが最大限に引き出されるのと同時に、入ってくる暗示に対して無防備になります。覚醒状態で夫の浮気を聞かされても不快になるだけに終わると思われますし、自分が飛び下りていると言われたりしても現実がそうでなければ誰しもが真に受けません。しかし、催眠状態なら上のようなことが、本来の無意識の力によって引き起こされるのです。
☆参考書籍『催眠術入門 自分と他人の心を自在にあやつる心理術』
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