自分が人形になる催眠演芸

深い催眠誘導の経験がある人物の用意が必要なので、比較的披露されることが少ない催眠演芸の演目に、「人形になる催眠」があります。人間が縫い包みか何かのようにぐったりするという意味ではありません。眼前の人形が自分の分身のようになって、その人形の感覚が自分に伝わってくるような状況に対象者をする催眠なので、より正確には「人形とつながる催眠」などと呼んだ方が良いかもしれません。

座った状態の対象者を深めの催眠状態にしてから目を開いてもらい人形を見せます。人形は基本的には人型の方が望ましいでしょう。「この人形はあなたです。この人形がされていることは、全部あなたがされていることです。」のような暗示を入れます。

そして、その人形をくすぐったりすると対象者はくすぐったがりますし、人形を床に落とすと、対象者は痛がったり悲しい気持ちになったりします。さらに、人形の首をかしげさせると対象者も首をかしげるようになり、前かがみに人形を折り曲げると対象者も座ったまま前傾します。

通常はこのような催眠演芸を対象者が人形を見ている状態で行ないます。しかし、非常に深い催眠に至った場合は、人形と対象者が同調したような状態になるため、目を塞いでいても、人形と対象者がリンクしたような反応が現れるようになります。吉田かずお先生は、この状態を「チャネリング」と呼んでいました。

こうした催眠演芸は人間全部ではなくて、肉体の一部でも成立します。往年のアダルト・ビデオで催眠演芸を披露したり指導していた吉田先生は、深い催眠状態にした男性に対して、ソーセージを見せて、「これはあなたの男性器です」と暗示を入れてから、それを熱湯の鍋にポンと投げ込む…という演芸を見せたりしています。(盟友である代々木忠監督の古い作品の中にその様子が残っています。)

催眠技術はこうした人間と物体とのつながりを実現することもできるのです。

☆参考書籍『伝説の催眠術師、吉田かずお先生からならったこと: 二年目の催眠感想文