「女性に磁気をかけるのは、常に男性であります。(中略)男性は、女性の膝を己の膝で挟みます。そこで、胸部、腹部、下腹部と手でさする際、双方の最も感じやすい肉体部分が隣接せんばかりの姿勢で手の接触が行われるのであります。身を寄せ合い、頬が触れ、息が混じり合うほどであれば、両性がたがいに強く引き合わぬはずはありません。官能に火がついても何ら不思議とは申せません」。
「徐々に顔が火照り出し、目が輝いてまいりますが、これこそ自然の欲望の萌しであります。(中略)発作が長引くと、目も覚束なくなり、これぞ官能が騒ぎ立てる兆候であります…(中略)目が潤み、呼吸は短く途切れがちになります。胸が激しく上下し、ついには痙攣が起きることになります。(中略)このような痙攣状態は、(中略)、当事者の女性にとってはおよそ苦痛はなく、ごく自然なのであります。(中略)記憶があっても不愉快なわけではなく、女性はむしろ満足に感じます」。
18世紀後半に、フランツ・アントン・メスメルの「動物磁気治療」が公序良俗に反しているとの疑いについて、調査委員会が国王に宛てた報告の一部です。読み進めると、まるで官能小説の女性が絶頂に達する描写のようです。メスメルの治療に殺到した女性の多くは、官能を求めていたと報告書は結論付けています。
吉田かずお先生は、「女性の深い性的快感と催眠による弛緩状態の快感は、実質同じだ」と言います。催眠の個別セッションにおいて、個室でラポール形成を入念に行ない、悩みに耳を傾け、その解決をしてくれる上に、快感まで与えてくれる男性催眠術師。メスメルのように手で擦り回さなくても、女性の被験者が“気持ちよさが押し寄せる催眠施術”を求めるようになっても不思議ではありません。
吉田先生は、女性に施術する時は、最初に施術回数見込みを暗示で書き込むことが多いと言います。それは、施術を通して無意識に書き込まれる強烈な快感体験を、被験者が際限なく求めないようにするための方策なのです。
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