両津勘吉に催眠術をかけた女性

両津勘吉は、有名な『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の主人公の警官です。1976年から連載している『週刊少年ジャンプ』の2016年第7号(2月1日号)では、彼は、ぐちゃぐちゃにモノが詰まった机や、ゴミ屋敷状態の部屋などの惨状を、周囲の人々から言いとがめられます。

聞く耳を持たない両津に、部下の女性警官の秋本麗子が採った方法は催眠術でした。日仏ハーフのセレブ社長でもあり、学識も高い麗子に、同僚の中川が、「深層心理学を学んでいる」なら、「催眠療法」を試すべきだと発案したのです。

その施術は驚異的です。カネに目のない両津に、「二千円上げるから、ゲームをしよう」と持掛け、「キレイ好きになるおまじないをかける」と宣言します。誘導法と暗示はやたらにシンプルで、掌を凝視させて何かをした後、「はい。今日からキレイずき!」と言っただけです。

この実質的な瞬間催眠は、じわじわと効果を表し、徐々に両津は過敏なほどのきれい好きになると同時に、なぜかオネエ言葉を話すニューハーフのようになっていきます。どんどん変化を加速させる両津に驚愕し、麗子と中川は解除を決断しますが、今度はお金でも釣れず、仕方なく強引に催眠をかけて、辛うじて両津は元に戻ります。

「事実上の瞬間催眠」、「本人が嫌がる内容の暗示」、「じわじわ効果が強まる後催眠暗示」、「(元々の人間関係は強固にあるものの)ラポール不要の強硬施術」などなど、目を見張る催眠技術です。ただ、私には、催眠術の存在感が極端に社会から失せた現在、ポンとこのように催眠術が人気マンガのネタになることの方が、麗子の催眠技術以上に驚きでした。