「治せない」と言って治す…。催眠誘導ナシの即席催眠手法

或る食事会の参加者に各々希望する暗示を個別に入れたことがあります。30代から40代の女性が5人、「あんまりご飯を食べないようにしたい」、「慢性の肩凝りを何とかしたい」などの暗示の書き込みを希望してきました。吉田式呼吸法で一人ずつ暗示を書き込んでいきましたが、散会のため5人目は施術する時間が無くなってしまいました。

5人目の女性は腰を痛めて整形外科に通院していて、背筋の運動をするよう医師から言われているのに、それが続けられないと言っていました。彼女は私の施術を待つ傍ら、先に私が暗示を入れ終わった女性達から催眠体験談を聞いていました。

そこで、5人の女性達に簡単な自己催眠の方法を教えて、今回入れた暗示文を自分でも入れるように勧めました。そして、5人目の女性にだけ、こう伝えました。

「暗示の文章、もう分かりますね。だって、何をすべきか分かってるんですからね。まずは今晩眠り込んでしまう直前に暗示を言うんですよ。それで変わります。その変化を確実にするために、次回お会いする機会があったら、必ず私が暗示を入れますからね。今日は治せませんが、次は確実に暗示通りになるようにしますからね」。

後日、彼女からの連絡によると、背筋の運動をする習慣がついたようです。彼女が周囲の体験談を聞いて、催眠技術の可能性に信頼感を持てたこと。「暗示文を自分が分かっている」という前提と「自己催眠を自分で行ない、それが効果を出す」と言う前提で私が語ったこと。これらの要因で、その日の晩、就寝時に自己暗示を入れる前から、何となくストレッチを始め、それ以降暗示をほとんど入れることなく、習慣が定着したようでした。

かつて、ミルトン・エリクソンが、「私には治せません。あなたが自分で分かっているはずです」と伝えて帰した患者にも治療効果が出たという話があります。その話を思い出して即興で試したのですが、奏功したようで、自分でも驚いています。