クライアント企業さんがビッグサイトの展示会に出展するので、自社ブースでの名刺交換のオペレーションの相談を受けました。ブース内の展示物を見せて関心を持ってもらって、より多くの見込み客の名刺を集めるのが出展目的ですが、そのためにはまず、ブース前を通過する来場者に足を止めてもらわなければなりません。
ブース前を通過する来場者に声掛けをしてブース内に誘導することになりますが、闇雲に声をかけても、皆、足早に立ち去るばかりです。ブース前を通行する人々をよく観察すると、全く関心のかけらもない人々は目線を進行方向に向けたまま足早に通り過ぎます。
何か目ぼしいものはないかと思いながら歩いている多くの通行者は、最初にブース枠上部の看板にある社名やキャッチフレーズをちらりと見上げ、それから展示物に目線を落とし、展示物のどこか一点に視線を一瞬固定します。人間の適応的無意識は意識の数十万倍の処理能力を持っていて、一瞬にしてたくさんの展示物の中から(無意識に)関心が湧いたものに目線を投げるのです。
ボーっと見て歩いている状態で、さらにほんの1秒程度の時間ですが凝視が発生していると考えると、浅い変性意識状態と仮定することができます。そのタイミングで近づき注目されている展示物の特長を耳元で囁くと、軽い驚愕法が働き、適応的無意識にその言葉が書き込まれます。声を聞いてふと顔を上げたところに目線をばっちり合わせ、「よろしければ、手に取ってみてください」とゆっくりと言い切ると、凝視法が働き、サンプルを受け取ります。受け取っていただけたら、実質足止めは成功します。
ブーススタッフに二時間かけてこの声掛けを練習させたら、名刺獲得数は3倍になりました。来場者のモデル像を練り込んで、その人々にとってうれしい商品特長の表現を作ったのがカギであったようです。原理的には軽い瞬間催眠を実現できて良かったと思っています。
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