映画『プラネタリウム』に見る緊張系催眠を用いた“降霊会”の演出

現在、劇場上映中の映画『プラネタリウム』は、ジョニー・デップの娘のリリー=ローズ・デップとナタリー・ポートマンが、降霊術を行ないつつヨーロッパを巡業する美人姉妹を演じた作品です。妹が霊を呼ぶ媒介となって、姉が降霊会の進行役を務めて、二人セットで対象者にまつわる霊を呼び出す“芸”を見せています。

対象者はテーブルを挟んで妹の体面に座らされ、静かに妹を見つめるように言われます。妹は目を閉じ段々とゆっくりとした鼻からの呼吸を深く大きくしていき、座ったままの姿勢で天井を向き、半開きの瞼の間には白目が見えるようになります。呼吸は唐突に早くなり、「ハッハッ」と言う風に激しくなります。対象者は、姉から「妹を見つめ、呼吸にフォーカスするように」言われます。フォーカスするうちに、妹と呼吸がシンクロして行きます。姉がタイミングを見計らって目を閉じるように言うのと前後して、「始まった」などと言って、霊の到来を示唆します。そして、対象者は既に亡くなった親戚縁者などに出会うことになるのです。

姉は対象者の状態を的確に見極め、「息子さんですね。名前は?」などと話しかけ、イメージを固めるように誘導しています。流れを見ると分かる通り、これは催眠の技術です。

妹がまず「短息の催眠」と呼ばれる緊張系催眠で自分をトランスに入れ、姉が対象者を妹と同調させることでトランスに引き込みます。その上で、暗示を与え、会いたい人物に会わせるのです。映画でも終盤に姉が、自分達の芸が降霊ではないことを暴露しています。

催眠と言う言葉は使われていませんが、登場人物が降霊術に見せかけた催眠芸を種明かしして見せる非常に興味深い作品でした。