映画『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門』に見る“敵との同調”

海面から高く屹立した巨岩の上でサメに襲われ、業火の真ん中で身を焼きつつ耐え、瀧行の最中に上流から落ちてきた巨大な材木の直撃をうける。2017年公開の映画『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門』で、巨大な鉞二丁を武器として戦う大男ホークとの戦いに一度敗れた主人公石川五ェ門が行なった修行です。

飲食を断ち極限まで自分を追い込んだトランス状態を重ねて、石川五ェ門は視覚·聴覚などから入る敵の情報を判断して反応するのではなく、敵の動きを予知しつつ対応する動きを身につけます。これは、適応的無意識に身を任すことによってカラダの動きが研ぎ澄まされ、インプットとアウトプットの間の時間間隔がないほどに詰まった状態と解釈するよりも、多分、武道で言う「石火之機」と考えるべきでしょう。

「石火之機」とは、猛スピードで相手に反応するのではなく、相手と融合してしまうことです。自分の前にいる相手と融け合って一つの共身体を創り上げていて、相手の出方を検知してから対応するのではなく、互いがセットで一つの動きを創り上げている状態のことです。ユングの集合的無意識を用いて理解するなら、集合的無意識で相手と自分の行動が完全に連携した状態と見ることもできます。

この状態は、催眠施術の際に対象者と術者の間に発生する「同調」と言う高度なラポールと、原理的には同じと思われます。同調は、「自分自身の身体の緊張具合と感情を感じること」と、「相手に意識を向けること」を同時に行なうと発生します。それが起きると、催眠施術時でも、相手と声のトーンや身体の動きが合っていて、第三者から見ても二人の様子が自然に通じ合っているように見えると言われています。

劇中では、その状態を全身の神経が輝き透けて見える画像で表現しています。この映画を見ると、第三者と相互に働かせ合う高次元の適応的無意識の状態に、遥か昔から日本人は自覚的であったということに気付かされるのです。