「女性は催眠術師に向いていない」説を考えてみる

「催眠術を勉強して、なれるなら催眠術師になろうと思ったが、女性は向いていないので諦めた」と言う女性を私は何人か知っています。向いていない理由は、皆が「声質が適していない」と答えます。特に私の吉田式呼吸法の誘導を見た女性は、私の声や口調が低く落ち着きがあるので、誘導が楽なのだと考えているようです。

このブログの記事『Sweet & Low』でも書いた通り、吉田かずお先生のゆったりと落ち着いた低い声の口調をまねるようにはしていますが、その印象度合いは未だ遠く及んでいません。或る朗読家に吉田先生のCDを聴いてもらい、その口調の指導を依頼したことがありますが、リラックスしなくてはできない腹式呼吸が前提で、初回で早々に挫折しました。私はリラックスすることが非常に苦手なのです。

一般の催眠術師の演芸催眠を見ても、ゆったりと落ち着いた口調で誘導したり暗示を与えたりするケースは少数派です。以前書いた二つのブログ記事『NLP研修センターで殺人事件も発生! 『メンタリスト』シーズン1の催眠』と、『宅配便で届く “記憶” ! 映画『トランス』に見るイメージ利用法!』に登場する凄腕の催眠術師は、両方とも女性です。

弛緩系催眠なら低い声は一応有利だとは思いますが、緊張系催眠ならむしろ高いキーの声の方が有効な場面があります。吉田式催眠観に拠れば、催眠術をかける際に最も大事なことはラポール形成です。誘導法も、まして声質も、単独で重要な要素ではありません。どのような手法であってもラポール形成さえうまく行けばよいのですから、私は、「女性は催眠術師に向いていない」説をかなり疑わしく感じています。