映画『ダンスウィズミー』で考える催眠技術の“部品販売”

映画『ダンスウィズミー』では演芸催眠で有名な十文字幻斎氏が催眠技術の監修をしていて、パンフレットにもコメントが書かれています。この映画には冠番組さえ持っていた往年の有名催眠術師が登場します。現在は遊園地での「催眠の館」で詐欺に近いような商売にも手を染めていたりして、複数の借金取立て屋に追われて地方巡業をしつつ逃避行を続けています。

演芸催眠者としてステージに立ち、食べて行くには、それなりに有名である必要があります。そのためには、演芸内容に際立った特徴があり、さらにそれがそれなりに広く認知されている必要があります。簡単に言ってしまうとブランドが必要です。

一方で、たとえばマジック演芸などの催眠技術を採用している部分の監修をしたり、ネタを裏で用意したりするのは、ステージで見せる演芸の“部品”として催眠技術を売る仕事です。もちろん、“部品販売”と言っても技術が低ければ依頼が来ませんから、技術レベルが高いことは必須条件です。

ただ、一般の人々に広く認知されている必要はありません。宣伝やSNS活用も無用です。特定のマジシャンなどの演芸者にその技術レベルさえ知っていてもらえれば、仕事はきます。広く一般に認知されていない以上、たとえば、不倫とか交通事故などの芸能人のスキャンダルのようなリスクを負わなくても済みます。

“完成品”販売をする演芸催眠術師ではこうは行きません。一発スキャンダルが発生したり、お客様が飽きてしまったら、同じブランドのままで返り咲くのは困難です。このように“完成品”販売は、ハイ・リスク・ハイ・リターン型の商売であるのに対して、“部品”販売はロー・リスク・ロー・リターン型と言えるでしょう。

かつて吉田かずお先生も一世を風靡したMr.マリックのネタを作っていました。その吉田先生が衛星放送の4時間催眠特番の枠を貰った際に企画構成の仕事を私もしたことがあります。私は自分や第三者が行なうスピーチに催眠技術を盛り込んだりすることもできます。催眠技術はその応用範囲がとても広いので、催眠技術そのものとして売るのではなく、他の商品の“部品”として売る方法も多種多様に存在するのです。

☆映画『ダンスウィズミー』(DVD)