反復誘導法で実現する深催眠

以前の記事『「深化法」は本当に必要なのか』では、多くの催眠入門書で特殊な誘導法を幾つも紹介することが多い「深化法」が実は催眠施術上あまり大きな意味を持っていないことを紹介しました。吉田かずお先生は深催眠状態を実現するのに、基本的には日をおいて何度も施術を重ねるということをよくやっていました。

このように例えば、週一回とか隔週一回とかのように催眠誘導を重ねれば、どんどん催眠状態が深くなっていきます。

それに対して、同じ時間枠の中で連続して誘導を繰り返す反復誘導もまた、深催眠を実現する方法として知られています。フランスの心理学者ピエール・ジャネーは、人間は催眠状態から覚醒させても尚、しばらくの間は浅い催眠状態にあるとしています。確かに覚醒のプロセスが確実になされていても、対象者がボーっとしている状態のようなことはよくあります。(帰宅を安全にしてもらうため、再度覚醒の作業をして、覚醒状態を明確にすることもあります。)

一般に言われる「反復誘導法」はこの覚醒後も続く浅い催眠状態のうちに再度催眠誘導をする方法を指しています。

特に、先に催眠状態になっている対象者を覚醒させる前に…

「(1から4までカウントをして覚醒のプロセスを進めた後で)次に私が5つといって手を叩くと、ゆっくりと目が覚めます。けれども、前よりもっと深く催眠に入ります。はい。5つ!」

などと、次に誘導する際に深く催眠に入ることを暗示として書き込んでしまうと良いでしょう。そして対象者がゆっくりと目を開いたら、凝視法などに持ち込んで、再度催眠誘導すると、単純に覚醒しきらない所に畳み掛ける催眠誘導の効果に、深催眠に入る暗示の効果が加わるため、より深く催眠誘導ができるようになるのです。

☆参考書籍『催眠術入門 自分と他人の心を自在にあやつる心理術