路上ナンパにも用いられる究極のコミュニケーション術「同調」

吉田かずお先生は、催眠の学習者に、まず自己催眠から教えます。これは、催眠状態をまず自分が体感しておくこと以上に、催眠施術をする際に、自分も変性意識状態になるためであることが大きいと、吉田先生は言います。

変性意識状態は一般にボーっと何も考えていない状態ですので、仮に施術に熟練したとしても、相手の様子に応じて臨機応変に施術をすることが難しそうに私には思えていました。

一方で、NLPの本で知った「バイオラポール」の実現性にも疑問が湧きました。呼吸や瞬きなどの身体の動きを合わせてラポールを形成する技術ですが、書籍などで頻繁に紹介されている割には、それを円滑に行なえているNLP資格者にあったことがありませんでした。『メンタリスト』シーズン1の第18話『血染めのジャガイモ』にも、NLP初心者の捜査官がぎこちなくバイオラポールに取り組む様子がギャグとして登場します。

この二つの疑問を一気に解いたのが、路上ナンパ講座も開いていた高石広輔氏の著書『あなたは、なぜ、つながれないか ラポールと身体知』です。彼は、「自分自身の身体の緊張具合と感情を感じること」と、「相手に意識を向けること」を同時に行なうと「同調」が発生すると説明しています。そして…

「そのときには、相手と声のトーンや身体の動きが合っていて、第三者から見ても二人で話している様子が自然に、通じ合っているように見える。こうした気持ちが通じ合う、互いの「つながり」を感じられる状態を「同調」と言う。同調できているときは身体の動きのリズムや声のトーンが自然と一致する」と述べています。

施術時にかける側と掛けられる側が同調すれば、かける側も集中によって変性意識状態になった上で、相手の状態はつぶさに理解できますし、バイオラポールも結果的に発生することでしょう。言葉のみに拠らず、相手とつながる究極のコミュニケーション術「同調」が催眠施術の本質とみることができるのです。