『自分の「うつ」を治した精神科医の方法』を読む

医師の宮島賢也氏が著した『自分の「うつ」を治した精神科医の方法』を読みました。医師自ら鬱になり、「鬱の患者さんも治せないし、自分も治せない」と悩んだ末に、「ナチュラル・ハイジーン」と呼ばれる食事療法を中心に幾つかの手法を重ね、投薬なしで治した体験談です。

驚くべきことに、精神科医の仕事は症状を基準にしたがって分類して機械的に診断して投薬することと言った、多くの精神科医の実態を躊躇なく明らかにしてしまっています。また、鬱の症状は、自分の心の問題点を知らせるための警報のようなものであり、それを抗鬱剤などで抑え込むのは、消火をせずに火災警報を切るようなものとさえ述べています。

著者が食事療法よりも紙幅を割いて強調しているのは、自分を卑下し否定しがちなネガティブな認識をなくすことです。自分についての考え方を変え、仕事や人間関係に対する考え方を変えることが、と言うよりも、変えることだけが、鬱の根本的な治療になり得ると主張されています。

適応的無意識が回路としてでき上がらせてしまった習慣的な考え方や行動パターンは容易に変えられません。そして、それを簡単に実現する方法は催眠の技術しかありません。実践催眠術の第一人者吉田かずお先生は、「心の病は催眠でしか治せない」とよく仰っていますし、現実に、以前には渋谷に先生が開いた催眠サロンで鬱に悩む多くの人々に施術を行なっていました。

そして、宮島医師が採用した主要な方法の一つには自己催眠が含まれているのです。(本文中では「自己暗示」と表現されています。)鬱への効果的な対策の一つとしての催眠技術が現役の医師の体験によって証明されている貴重な資料となる一冊です。