日本人が幸福感を得るため手法 “習いごと”

幸福感の研究で有名なセリグマン教授は「幸福の方程式」と呼ばれている考え方をつくりあげました。その式は…

H=S+C+V

で、実際に経験する幸福の水準(H)は、生物学的な設定点(S)と生活条件(C)と自発的活動(V)によって決まるというものです。大雑把に説明すると、まず幸福にはベースになる水準点のようなものが元々生物学的に、つまり、遺伝的に決まっているということになります(Sのことです)。そこに外的な環境などの生活条件(Cのことです)や、自分自身の活動のありかた(Vのことです)が加わって総合的にその時々の幸福が決まるということになっています。

生活条件と呼ばれている外的な環境要因のCは全人類に共通の各種の外的要因です。たとえば自分の判断で物事を決められる自由があると人は健康状態までよくなると言った実験結果が示す環境要因があります。問題は生物学的な設定点のSです。遺伝的に決まっている基準値が日本人は非常に低いのです。幸福感や爽快感を引き起こす脳内物質のセロトニンを脳内で運ぶ能力を決める遺伝子の分布が、世界の地域ごとにかなり異なり、日本を含む東アジア地域では伝達能力が低く、端的に言うと幸福感を得にくい人々であるのだと分かってきました。

幸福感の水準(H)を高めようとすると、生物学的な設定点(S)が少ない分を「自発的活動」のVで補う必要があります。自分の努力で「しあわせ感」を補わなければ、全体の「しあわせ感」が増えないことになってしまうのです。フロー状態(=変性意識状態=催眠状態)は安定した“充足感”をもたらします。そして、古来から日本人社会に根差してきた各種の“習いごと”の習慣は、何かに集中することを頻繁に発生させます。つまり、フロー状態が発生するのです。

“習いごと”は、日本人が幸福感を得るための伝統的な手法の一つだったのです。