エコー・チェンバーは、日本語では「反響室」や「残響室」と訳されますが、反響する音の効果も含めた録音を行なうための部屋を指しています。ここから或る社会現象を指す言葉として(なぜかこの場合「・」を取るのが慣例のようですが)「エコーチェンバー現象」や「エコーチェンバー効果」などと言われることが増えて来ました。
AIがSNSの裏側で制御を行なうのが当たり前の時代になって、SNS上では使用者がよく閲覧する事柄に関連する情報や、同じ主張や思想が自動的に選ばれて繰り返し表示されるようになっています。(つまり、同じポータルサイトを見たり、同じ言葉で検索したりしても、人によって見せられる結果は異なるということです。)
AIのみならず、SNSなどの利用者は、自分の関心や承認欲求を満たすために、同じ意見の人間の集まるスレやサイトに集まるのが普通ですので、そこでもまた、類似した思考や主張に偏っていきやすいことが分かります。そして一般に極端な意見や見解に判断が引き摺られて行きがちです。エコーチェンバー現象は、こうした閉鎖的な情報空間で類似した価値観の人間が交流・共感し合うことで、特定の思考や主張が増幅して行く状態を指します。
最近、鬱やパニック障害などの色々な精神的な症状の方々のお悩みを伺うと、このエコーチェンバー現象が背景に登場することが増えてきたように思えます。元々職場や家族などの人間関係などの過度のストレスや、場合によっては明確な虐待やハラスメントなどが原因になって、自覚できるような症状が出ているのですが、その後、自分でそれを調べ理解しようとして主にネット検索を重ねて、どんどん症状が悪化しつつ変容していくようなパターンです。
吉田かずお先生も嘗て「鬱になる人というのは、暗示が入りやすい人だ。だから自己暗示でも簡単に負の暗示が頭に書き込まれてしまい、どんどん酷くなっていく」と言っていたことがあります。この「どんどん酷くなっていく」部分が、吉田先生の知る時代に比べて、スマホを通したSNSの時代にエコーチェンバー現象で加速度的に悪化したと解釈することができるでしょう。
実際に、仕事上の失敗が数度続いたことから、自分を無能や無価値と思い込み始めた相談者は、スマホでどんどん自分のような事例を読み込んで、以前はなかった自傷行為や摂食障害にまで至っていました。
しかし、幸いなことに過去に相談を受けた方々は簡単に最悪な状況から抜け出すことができました。エコーチェンバー現象で簡単に負の暗示が書き込まれてしまうということは、プラス方向の暗示も簡単に書き込めるからです。過去数人の事例では、1回目の施術終了後には、表情も言動も穏やかで柔和なものに変貌します。その上で自己暗示の方法をお教えして2度目に経過を伺うと、問題が概ね解消していることが殆どです。元々、苦しい状況から早く逃れたいと思って行動していた訳ですから、プラス方向の暗示は染み込むように深く根付きます。
自覚できる辛い症状は、一旦心療内科などへの相談をお勧めしますが、無意識のプログラムを書き換える暗示の効果を用いるのも問題緩和・解消の近道と言えるかと思います。
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