社会に束縛されることの幸せ

19世紀末に社会学を作り上げた一人であるエミール・デュルケーム博士は、世界中からデータを集め、自殺率に影響する要因を研究しています。彼は膨大な数の自殺事例を綿密に調べ、新たに確立した社会学的アプローチから自殺を4つ(3つとする考え方もあります)の類型にまとめるなどの業績を残しました。

彼の研究からの重大な発見の一つに束縛のプラスの効果があります。社会的な束縛や絆や義務が少ない人ほど、より自殺する率が高かったのです。この発見をデュルケーム博士は、人には人生に意味と構造を与えるために、義務と束縛が必要であると結論づけました。

それ以降の現代に至るまでの研究で、彼の説の正しさは科学的に証明され続けています。強い社会関係を持つことは、免疫システムを強めることも、手術からの回復を早めることも、うつ病や不安障害に対するリスクを軽減してくれることも、分かってきたのです。

SNSでつながるあったこともない多くの人々は、「いいね」という承認はくれますが、病気のときにもお金に困ったときにも助けてくれることが考えにくい人々です。相互扶助組織や共同体と言った言葉には古い因習的な縛りのようなイメージが伴いますが、物理的な接触を前提とした、持ちつ持たれつの関係を持つことや、自分を相応に束縛する組織に属することは、人に幸せをもたらすのです。

家族関係や職場や学校の人間関係、その束縛の辛さに関わる相談を受けることが時々ありますが、催眠の技術なら、束縛が本来もたらす幸せを無意識に書き込むことで、その悩みはあっさり解決するのです。