100年後、22世紀の催眠術

催眠術の歴史を振り返るとき、古代文明の国々を率いた王達が触れるだけで奇跡を起こしたという「ロイヤル・タッチ」や「ミダス・タッチ」にまで遡ることができます。そして、18世紀後半にヨーロッパに大催眠ブームを巻き起こしたメスメルの登場にまで時間が飛びます。このブームによって、医療分野における催眠術の応用方法はほぼ研究しつくされたと考えて良いでしょう。

19世紀になって、外科医師スコット・エズデイルが催眠術を麻酔技術として用いて3000例以上の手術を行なっています。精神的な疾患に関しても並行してどんどん適用が進められています。19世紀後半、無意識を理論づけたことで有名なフロイトもシャルコーから学んだ催眠治療法でヒステリーの治療を行なっていたのです。

そのように考える時、催眠術の応用の可能性や技術的な深度は、現在を大きく上回るものであったと考えられます。「催眠の巨人」とさえ言われるミルトン・エリクソンでさえ、19世紀までの催眠技術の衰退を押し留める程度の貢献をしたと位置づけることさえできそうです。つまり、それ以降、催眠技術そのものは大きく発展を見ないままに現在に至っているのです。

『フューチャー・オブ・マインド 心の未来を科学する』という2015年に書かれた本には、脳とのインターフェイス技術の進展とその可能性がまとめられています。その中には記憶の抽出とそれの他個体への移植などの技術もマウスの単純な幾つかの記憶では成功しつつあることや、人間が思い浮かべていることを脳に向けてのセンサを使って感知し外部のモニタに映し出すなどの技術開発の過程が描かれています。100年ほど先には、これらの技術が人間に対してかなり確立した技術として存在するだろうと予測されています。

これは基本的に催眠技術による暗示の書き込みと同様の効果をもたらす技術と考えられます。瞑想中の脳波の解析なども進んでいますが、催眠技術はこれらの脳の研究の一対象として解き明かされた後、脳科学の技術によって代替される可能性が高そうに思えます。