催眠商法に使われている催眠技術

「催眠商法」は「霊感商法」などと同じ「悪徳商法」の一類型です。その手法は「安売りの名目で閉鎖的な会場に呼んだ来場者に、限られた数の日用雑貨をただ同然で販売し、来場者が一種の催眠状態になった時に、お得感を演出して、高額な商品を売りつける」とされています。

この定義にある「一種の催眠状態」は、演芸会のような楽しい話を聞かせられて、来場者が笑いで湧くことや、頻繁な呼びかけに「ハイ」と相槌を打たせる約束をして、何度も我先に返事をさせたりすることによって生じているとされています。集団的なトランス状態になることもあるかもしれませんが、必ずしも熱狂的な忘我の心境ほどに至らないように思えます。吉田かずお先生による催眠技術の定義は「変性意識状態の対象者の無意識に暗示を書き込むこと」です。催眠商法の軽い集団的トランスの状態に対して、明確な暗示の書き込みが為されているとは言い難いようにも感じます。

むしろ、「皆が買っているから」、「残り少なくなって、今、この場でしか買えなくなっているから」、「昨日までに比べると安くなったから」などの行動経済学の原理に拠って購買が引き起こされているのが実態です。

催眠の要素があるのは、「ラジウムを練り込んだという毛布を体に掛けるだけで、カラダが楽になる」と言った実演を会場で行なうと、一定割合の来場者が本当に効果を感じることなどでしょう。これはプラシボ効果です。被暗示性が高い来場者が「そうなる」と思い込んでいるが故に、そう感じていると考えるべきだと思います。催眠商法と言う割には催眠技術の活用は限られているようです。

色々な業界でも実践されている通り、販促セミナーの来場者に購買を促すこと自体は違法でも何でもありません。さまざまな付加価値の多くは購買者の思い込みによって成立しています。実際、催眠商法の業者も昨今はギリギリ合法の範囲内で商売をしていると言います。通常の企業も合法の範囲でその手法を採用した方が、効率的な経営改善ができそうです。