犯罪性が問われやすくなったセックス催眠

男性が催眠を習いたい本当の理由のうち、相当の割合を占めると言われるのが、女性を誘惑したいというニーズです。明治の文豪である森鴎外が描いた催眠犯罪小説『魔酔』もこのテーマです。見知らぬ人物にも無条件でかけられる瞬間催眠は、ナンパか犯罪の場でも想定しないと、現実的な必要性がほとんどないのに、催眠レッスンの人気メニューとなっているようです。

「セックス催眠」と呼ばれる催眠ジャンルでは、通常の状態の女性被験者に催眠をかけ、性的快感を想起させたり、そのままオーガズムに到達させたりするものです。吉田かずお先生は、元々不感症治療法としての「セックス催眠」の発案者で、1970年代後半ごろに、当時の有名深夜番組『11PM』でこの技を芸として披露していました。

このようなセックス催眠を演芸として行なうのであっても、一般の女性に対して行なうのであっても、事前に本人の同意があれば違法性はありません。しかし、催眠状態で入れる暗示は催眠誘導後に自由自在に変更できますから、他の目的の催眠施術をネタにして、催眠誘導し、性行為に同意させることや、性行為を求めさせることさえ簡単にできてしまいます。さらに、明確な催眠誘導の行為を行なわない間接催眠の技術を工夫すれば、本人に催眠をかけられている自覚を与えず、催眠誘導することも原理的には可能ですから、より悪質なケースは起こり得ます。

催眠状態の女性に対して強制的に性行為を行なえば、準強姦罪が適用されていましたが、2017年に法律が改正され、準強制性交等罪が適用されることとなりました。新法の違いとして、被害者と加害者の性別は問われなくなったことが目立ちます。しかし、より重要な論点は、非親告罪となったことです。

つまり、被害者が告訴しなくても、犯罪として成立することになりました。忘却催眠の技術を使えば、催眠誘導中に起きたことを思い出せなくすることも原理的には可能です。それによって強制性交を告訴させないことも可能でした。しかし、今後は、そのような事実を知る第三者が告発する道ができたため、犯罪として立件される可能性は高まったと考えるべきでしょう。