バイオラポール再考 ~結果として起こるバイオラポール~

NLPでよく挙げられるラポール形成の手法に、相手の態度や所作などを真似する「ミラーリング」や、相手の話題や口調に合わせる「ペーシング」、相手の発言を要約してオウム返しする「バックトラッキング」などがありますが、バイオラポールは呼吸のペースまで合わせるような、さらに上級的技術として位置付けられているようです。

オハンロンの『ミルトン・エリクソン入門』の中にも「呼吸のペースを合わせるなどの身体の動きのリズムを合わせて、類似性を対象者の無意識に認識させることによるラポール形成の手法」として説明されています。このバイオラポールをラポール形成のためのテクニックとして説明している催眠術師がいますが、その言説を私は少々疑わしく感じています。

通常、催眠誘導を始めると、「同調」という現象が起きます。対象者に対して催眠誘導を行ないつつ、相手に意識を集中させることで自分も催眠状態にすれば、同調は簡単に発生します。つまり、催眠施術の誘導をする際に、自分も催眠状態にするのです。同調すると、無意識の境界があやふやになり、対象者の感情や身体の緊張状態が自分の身体のことの延長線上のように感じ取れるようになります。そうすれば、相手の催眠状態の操作が自由にできるようになります。

同じように考えると、催眠術者と対象者の間に同調が起きれば、「バックトラッキング」や「ミラーリング」、「ペーシング」のようなものまね技術でラポールを形成する必要はないでしょう。バイオラポールのような呼吸合わせも必要ないはずです。なぜかと言えば、同調が起きれば、これらは結果的に起きるからです。

一部の人の言うバイオラポール形成を手段として行なう言説は、私には原因と結果が逆になっているように感じられます。少なくとも施術においてバイオラポールを形成しようと意識的に努力するのではなく、同調が発生するから結果的に自然とバイオラポールも発生するのだと思えるのです。

☆参考書籍:『ミルトン・エリクソン入門