「社会的相乗効果」が人々にもたらした可能性

「現在、もっとも普及している「児童向けウェクスラー式知能検査」と「ウェクスラー成人知能検査」では、調査対象である30カ国以上において、この50年間に知能指数(IQ)は平均15ポイント以上高くなっている。(中略)
フリンはこのスキル上達の好循環を「社会的相乗効果」と呼び、抽象的な思考能力における世代間の格差についても、同じ理論で説明した。
この100年間で、人びとが仕事や日常生活で分析的、論理的に考える必要は高まるいっぽうだった。学校での教育年数が長くなるほど、機械的暗記に頼るのではなく、ますます論理的に考えることが求められる。
環境の変化であれ、遺伝子の変化であれ、小さな変化が好循環を引き起こすきっかけとなる。どちらの場合も社会的な相乗効果が生まれ、文化をとおして広まっていく。なぜなら、私たち一人ひとりが、みんなのための環境をゆたかにするからだ」。

『やりぬく力』に登場するニュージーランドの社会科学者、ジェームズ・フリンの研究についての説明です。「中略」の部分には、テレビが家庭に普及して皆がバスケットボールのスター選手の見事なプレーを見る機会を得て、子供たちがそれを皆でまねすると、以前に比べて社会全体にその技術の普及と向上が早まった話が説明されています。

以前このブログの『催眠メルマガ発行開始!』の記事にも…

「あんなことを30年前にできたら、一生食って行けるような曲芸になった。今はできる奴はゴロゴロいるし、どんどん増えている。インターネットの画像が普及したせいで、『あんな風に自分も絶対にできるはずだ』とイメージしやすくなった。それはつまり、自己催眠がしやすい環境になったということだ」。
と、スケボーのハーフパイプの競技をYouTubeで見た吉田先生の言葉を紹介したことがありますが、フリンが唱える「社会的相乗効果」の一環をインターネットの普及とそこに付帯的に発生する催眠現象が劇的に後押ししたことが分かります。

しかし、有名な『AIvs教科書が読めない…』によれば、読解力は昔から全然伸びずに自国語で書かれた文でさえまともに理解できない人は昔も今も多数存在しています。処理能力が上がっても、インプットが乏しいままなら、あまり意味がないのかもしれません。そして、合理的な思考で辿り着く当たり前の結果はAIも辿り着くものですから、それが伸びても、AIにはできない仕事をするには役立ちにくいとも考えられます。さらに、『スマホ脳』によれば、全世界的なスマホの普及でIQには急激な低下傾向が見られるとのことですから、100年の積み上げもご破算の可能性大です。

催眠技術なら「スマホ断ち」もできますし、本をじっくり読むことも習慣づけられます。未来に生き残る自分づくりにおいて、結局、自分の無意識をコントロールが最高の手段なのです。