映画『幻肢』に見る“無電源「ラブプラス」”の可能性

劇場で観てそのプロット構成の妙に感激した『幻肢』のDVDが発売されたので、早速購入しました。

幻肢は元々第一次大戦中に手足を失った兵士達の一部に、失われた手足の感覚がリアルに残っていることから発見されました。映画では、激しいショックを伴う喪失対象があった時、四肢だけではなく愛する人物そのものでも出現するということになっています。

主人公の医大生、雅人は幻肢を研究テーマにしていて、現実に鬱治療に使われているTMS(経頭蓋磁気刺激法)を脳の特定部位に当てると記憶が蘇ると考えています。自分が起こした交通事故で愛する彼女を死亡させた記憶が失われていると分かって、自分を実験台にして、彼女の記憶を蘇らせるのですが、それがAR技術さながらに現実の中に蘇るのです。

催眠技術でも、深い催眠にある状態の被験者に、「私が全く見えなくなってしまいます」と暗示を入れると、被験者にとっては透明人間になることができます。逆に眼前の人物について、被験者に「あなたが大好きなアイドルが会いに来てくれましたよ」と暗示を入れると、目の前の人物がアイドルに見えるようになります。かなり深い催眠を用いれば、『幻肢』の彼女も、実現の可能性は十分にあるように見えました。

幼いころの孫の写真などを楽しげに見続ける老人のみならず、実際にはいない人を慕ったり恋い焦がれたり、愛したりする幸せの中に生きていきたいと考える人生の場面は存在します。「ラブプラス」を大きく超えて、記憶されている限り、その人の息遣いや肌触りまで再現できる幻肢の人物との幸せな時間。

人は幸せな思い出の中に生きていけることが痛感されるのです。