催眠の3ステップは「誘導」、「暗示」、「覚醒」です。「ラポール形成」を加えて4ステップでも良いでしょう。確かにこれらのステップは、対象者の無意識に暗示を書き込むには必須です。けれども、催眠には具体的な行動などを暗示の形で書き込まないで完了する使い方もあります。それは、対象者の無意識を引き出すことです。
有名な催眠術師、守部昭夫氏の弟子である吉峯幸太郎氏の著書『催眠のすすめ』には、「催眠面接」と言う、彼がよく施術対象者に行なう手法が紹介されています。対象者を感覚支配のレベルの催眠に入れて面接を行なうことを指しています。変性意識の状態では、意識的な嘘をつくことができません。催眠者の質問に対して、変性意識状態の対象者は本心の答えを口にします。つまり、建前ではなく本音が聞ける面接ができるのです。
もちろん、催眠面接にも限界はあります。考え込ませるような難しい質問や、無意識でも答えるのをためらうような質問をすれば、変性意識が解除されてしまうでしょう。『催眠のすすめ』の中にも、面接中の子供が答えを口ごもり、吉峯氏が質問を置き換えている場面があります。また、「上手な嘘つきはまず自分をだます」と言います。既に嘘で固めた事実認識が形成されていれば、嘘の答えを防ぐことはできません。
このような限界があっても、一つの画期的な面接手法ではあると思います。一定量のストレスを継続的に与えることでも、緊張系の催眠状態は発生します。就活学生達に悪評高い“圧迫面接”も、実はきちんと行なえば、“催眠面接”になりえるのかもしれません。
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