短い呼吸で起こす緊張で催眠誘導する!

吉田かずお先生の長年の盟友であるAV作品監督の代々木忠氏が、吉田先生との付き合いが長じるうちに、催眠術をマスターし、吉田先生とは異なる呼吸法を自ら編み出したことが、彼の名著『つながる』で描かれています。書籍の中では「(女性のトラウマを取る)呼吸法」と呼ばれているだけですが、この呼吸法について吉田かずお先生に尋ねると、「多分、『短息の催眠導入法』とか呼ばれている方法のはずだ」というので、私は個人的に「短息の催眠」と呼び習わしています。

代々木監督はこの呼吸法を主に「(出演する一般女性の)感情のブロックを溶かす」手法として用いています。

「吉田式呼吸法」との最大の違いは、「吉田式呼吸法」が呼吸を長くゆっくりとさせるのに対して、代々木監督の呼吸法は、息を早く短く繰り返させることによっています。吉田式呼吸法が弛緩系の呼吸法であるのに対して、緊張系の呼吸法です。

呼吸法が催眠誘導として効果を発揮するのは、呼吸が「無意識と意識の制御が重なっている唯一の臓器の肺で行なう行為である」からです。普段は無意識がコントロールしている肺を意識的に動かすと、無意識の制御はそれに矛盾する訳に行かず、無意識自体のあり方が、肺の動きに合わせることになってしまいます。つまり、肺の動きを通して、意識的に無意識のあり方を調整できることになります。

内臓全体は体の内外の刺激に対応して、協調しながら動いています。つまり、意識的に肺の動きを制御し、それに協調する内臓全体の状態に間接的に影響を及ぼすことになります。意識によって、呼吸を速く短くするようにし続けると、その不自然な呼吸を行なうための作業に集中せざるを得なくなり、緊張感が発生します。

緊張系催眠の短所は深催眠に誘導することが難しいことですが、ラポール形成がほとんど要らないという大きな長所があります。そして比較的短時間での誘導も可能です。弛緩系と緊張系の誘導がある対照の通りに、呼吸法にもそのままの対照があるので、そのメリット・デメリットを理解して活用することが重要だと思います。

☆参考書籍:『大人数を催眠状態にできる! 緊張系催眠: 催眠スピーチ術から催眠作業術まで