催眠を拒絶すると起きる激しい頭痛

催眠技術にラポール形成はとても重要です。「この人に催眠をかけられてもよい」、「この人に催眠をかけてもらいたい」。そう思ってもらわなくては、催眠誘導は成功しません。「私は催眠がかからない。ブロックする暗示を入れたから」と言う催眠技術に詳しい人がいますが、元来望んでいない人間から催眠に誘導されるということは起り得ません。ブロック云々はその意味ではできて当然です。

ところが、期せずして催眠暗示に曝されてしまうことがあります。たとえば、吉田かずお先生の催眠ショーを撮影していたクルーがバタバタと倒れてしまったことがあるようです。翌日、彼らがそれを我慢しようとしたら、今度は皆激しい頭痛に襲われたそうです。

私も吉田先生の催眠セミナーの運営を手伝いながら、催眠技術の実際を勉強していた頃、同じ苦労をしたことがあります。撮影クルー同様で、催眠歴半世紀以上の先生の技を見逃すまいと集中していると、催眠技術の「集中法」や「凝視法」が働いて、自分も催眠状態に引きずり込まれそうになってしまうのです。

変性意識状態になって暗示が入りそうになるのを拒絶しようとすると、激しい頭痛がしてきます。それが翌朝まで続くのでした。頭痛薬で対処していましたが、それでは到底収まらない事態が発生することになりました。私が他人にかけるようになると、私が口にする暗示を最もよく聞いているのは私自身だったのです。人に催眠を掛けると、激しい頭痛に襲われるとは、まるで、ゲームか何かの自爆技のようです。

吉田先生も、「ものすごい暗示力だな。人に催眠を掛けて自分が頭痛で困るなんて聞いたことがない」と驚いていました。これでは支障が色々あるので、結局、自己催眠で「催眠を掛けても頭痛はしない」と言う暗示を書き込んで、対応しました。催眠技術の活用には色々な配慮が必要であることが痛感される経験でした。