「できる人の習慣」として紹介される自律訓練法

書店のビジネス書売場に行くと、「できる人の習慣」に関する本が多数並んでいます。その中に、自律訓練法が「ストレスを発散させるセルフトレーニング」として紹介されていました。

自律訓練法は、ドイツの大脳生理学者フォクトの臨床的催眠研究に基づき、同じくドイツの精神科医シュルツがヨガの研究などを加えて原型を確立したとされる、とても有名な自己催眠法です。ストレス解消や抑鬱の効果があると紹介されていることが多いようです。

自律訓練法は、「手足が重い」、「手足が暖かい」と言った“公式”と呼ばれる7つのステップからなっています。吉田かずお先生が行なった「自律訓練法完全マスター」の講座の参加者を見る限り、書籍を読んで試しても、実際に各ステップをマスターするのは難しいようです。その最大の理由は、ステップに到達した際の催眠状態を知らないことです。

催眠状態の認識を持たずに、「手足が重い状態をイメージしましょう」と言う簡単な説明文を手掛かりに試すのは、山頂がどこか分からず闇夜に登山を始めるようなものです。習得への早道は、先に他者催眠で催眠状態を体験しておくことです。そして、「手足が重い」などの公式の状態も他者催眠で体験しておくことです。そうすれば、目標の状態を目指して練習ができます。

「できる人の習慣」として短い説明とともに紹介されている自律訓練法。その説明文のどこにも「催眠」の文字はありませんでした。読者は自律訓練法が自己催眠の一手法であることも知らず、簡易な説明文のイメージを手探りして、暗中模索を重ねてしまいそうです。