野戦病院で見いだされた催眠技術活用の可能性

先日まで小池栄子主演の『新宿野戦病院』というドラマが大ヒットし、その中で米軍軍医という存在がクローズアップされていました。命を救うための最低限の処置を(丁寧にやっている余裕がないので)雑に行なうという形の医療が主人公によって語られていました。

取り分け第二次世界大戦以前の戦争はミサイルや戦闘機などの大量破壊兵器があまり存在せず、戦闘力は兵士によるものに偏っていました。つまり戦争の勝敗は如何に相手の兵士を死傷させ無力化するかによって決まったということです。

「爆弾の破片で腹をえぐられ、下半身が戦車の下敷きになってもげてしまうといった、非現実的なまでに身体をじゅうりんされるのです。
 ところが、これほどの重傷を負って運ばれてきた兵士たちのなかに、手術の際、全く麻酔を必要としない者が目立ちました。腕を切断する手術のとき、麻酔薬を使い果たしてしまったので、仕方なく数人で兵士の身体を押さえつけて手術をはじめたのですが、兵士はまるで痛みを感じないかのように平然としていました。(中略)
 医師たちは『生きて戻れた喜びが、あまりにも大きく、それに注意が集中して、痛みのほうまで気がまわらない』という結論に達したのです。やがて、この状態を人為的につくるために催眠が導入されました。」

これは催眠術師の多湖輝の『催眠術入門 自分と他人の心を自在にあやつる心理術』の中の一節です。この痛みを感じない兵士の“発見”は、彼らの治療に応用されて行くのと並行して、痛みを感じず戦い続けられる兵士を創り上げることにも応用されて行きます。

催眠技術の歴史を振り返る時、さまざまなきっかけで催眠技術が世間に拡散されたり、技術の練度が飛躍的に向上したりしていますが、特に“人体破壊”が甚だしかったと言われる第一次世界大戦などの野戦病院の場で、催眠技術の可能性が広く知られるようになったことがわかるのです。

☆参考書籍『催眠術入門 自分と他人の心を自在にあやつる心理術