社会で生きることについての「息苦しさ」とか「生きづらさ」などが流行語や社会のキーワードのようによく言われるようになりました。
そしてそうした漠然とした問題が言及されるたびに、もっともらしい「賃金が上がらない日本」とか「ブラック企業」とか「理解のない時代遅れの上司」など、ありとあらゆるものが槍玉に挙げられ、スケープゴートにされています。槍玉に挙げられた組織や人間集団は相応にそうした問題を改善する方向には一応動きます。それは社会が改善していくプロセスと一応捉えられなくはありません。
しかし、「息苦しさ」や「生きづらさ」はほぼ全く解消されることがありません。凶悪犯罪は減り、医療技術は進み、衛生環境も良くなり、働き過ぎで命を落とすような人もほぼいません。人々は過去にはよくあった色々なしがらみから自由になって、推しに貢ぐために売春するのでさえ個人の自由になりました。総じてみれば社会はどんどん人に優しくなっているのにも関わらず「息苦しさ」や「生きづらさ」は消えないのです。
『Z世代化する社会…』はこうした状況の謎解きに挑んだ書籍です。この書籍はタイトルからイメージされる単なる若者論ではありません。Z世代の特徴はZ世代のものではなく、社会全体の写し鏡であり、Z世代以外の世代にも同じ特徴や問題が起きている(ないしは起きつつある)という立場をとっています。
そしてZ世代に見られる事柄は社会への不満によって起きているのではなく、社会で生きることで発生する諸々の不安から起きているのだと説明しています。
「そして、不安にも根拠は要らない。親友に裏切られたらどうしよう。陰で笑われていたらどうしよう。自分だけ流行に後れていたらどうしよう。今、何の不自由もなく友達と一緒に人生を楽しんでいても、それが明日には瓦解しているかもしれないと不安になることに、根拠は必要ない。そして根拠がなくてもそう思ってしまった時点で、不安は腫瘍のように心身に巣食うことになる」
不安は消費経済の中で人々を購買に駆り立てるために頻用されていると同書は指摘します。それはマーケティングでいう「潜在ニーズの掘り起し」です。腫瘍のように心身を犯した不安を抹消するには、無意識のその不安の回路を断ち切るしかありません。それには催眠の技術が間違いのない近道なのです。
☆参考書籍『Z世代化する社会: お客様になっていく若者たち』
☆参考書籍『“しあわせになりたい人”のための、超カンタンに充実の人生を送る方法』
最近のコメント