催眠術のプロセスは、「催眠術にかけられてもよい」と思わせる“ラポール形成”、“催眠誘導”、“暗示”、“覚醒”の四段階からなるのが基本です。多くの催眠術レッスンでは、“催眠誘導”に最も時間を割きます。さらに、入れた暗示を必ず解除して“覚醒”させることが強調されます。つまり、「ナンチャラ法」がやたらに並ぶ催眠誘導とその解除法ばかり教えるレッスンになるのです。
けれども、たとえば、ダイエットを目的として、「白米を食べたくなくなる」と暗示を入れる場合を考えてみましょう。
この人物が初見なら、術者への信頼感や施術への納得感が成功確率を大きく左右します。吉田かずお先生は、「ラポール形成さえちゃんとできれば、催眠は成功したのと同じだ」とよく仰います。ラポール形成さえできれば、誘導方法はほとんど問題になりません。メスメルのように棒で小突くだけでも、エリクソンのように握手をするだけでも、催眠状態に引きずり込めるはずです。
次の成功を左右する要因は“暗示”です。受け容れられやすく、狙った効果が確実に発生し、記憶にも長く定着しやすい表現。そんな暗示文を相手の状況に応じて作り上げるのは、簡単な作業ではありません。一方で、催眠状態そのものは放っておいてもいつかは勝手に解除されますので、“覚醒”の相対的重要性は低くなります。
催眠誘導と覚醒ばかり教えるレッスンは、催眠技術の最も大事な“ラポール形成”と“暗示文構成”の技術をほとんどカバーしていません。それは、既にすぐかかると分かっている人に、実用性の低い暗示文を入れては、すぐ解除する、数少ない催眠の場、演芸催眠専用の技術だからなのです。
最近のコメント