サブリミナル効果の催眠的な解釈

日常生活の中には、無意識に“集中して” 高度に複雑な作業をしている場面が多数含まれています。自動車の運転は非常に複雑な作業であるはずですが、慣れた道を慣れた自動車で走るのなら、何も考えずに運転できることでしょう。

事務系の仕事をしていれば、PCの入力作業を一時間以上続けて行なうなどのことも、細分化してみるとかなりこまかで複雑な作業の筈ですが、細かく考えることなくブラインド・タッチなどでバンバン進めているのではないでしょうか。

池谷裕二氏の『脳には妙なクセがある』には、最近の脳神経学の研究が紹介されています。モニターを見ながら作業をやっている最中に、モニター上に視認できない速度で「がんばれ」などと表示すると、視覚上全く認識していないのにもかかわらず、作業成果が向上すると言う実験結果が説明されています。

映画にCMの画像を認識できないコマ数で混ぜる有名なサブリミナル効果の実験は、その結果の有意性が確立できないままの評価でしたが、今回改めてその効果が確認された形です。

集中状態が無意識の支配する時間であり、無意識は意識が及んでいない知覚まで全て司っていることが分かります。このような無意識が顕在化している状態は、広義の催眠状態です。そして、そこに「がんばれ」と言った命令を送りこんで成果が出たのですから、これは広義の催眠術と捉えられます。

催眠術の基本的誘導テクニックに「凝視法」がありますが、集中は凝視だけではなく、このような日常作業の中にも多数発生しています。それを広義の催眠状態だと捉えると、そこに暗示を書き込む機会は必ず存在することになるのです。