催眠技術で高齢者に運動の習慣を作る!

米国コロラド大学のフレッシャー博士の研究により、体を動かすことで脳内にBDNF(脳由来神経栄養因子)が分泌されることが分かっています。このBDNFは脳細胞の成長やシナプスの結合を進める物質です。つまり、運動することによって、脳内が活性化するということです。ただ、この効果が出るには一つの条件があることも分かっています。それは強制的な運動ではなく自発的な運動に限るということです。

糖尿病を長く患って脳出血を何度か起こしてしまい、体に麻痺が出て歩行も困難になった高齢の夫の症状改善を催眠でできないかと歯科医の奥様から相談されたことがあります。

ご主人は、デイケアには週4日通って運動をしているものの、運動の習慣は形成されず、家に戻るとベッドから離れないということでした。この結果、食事療法を重ねても肥満と共に糖尿病の症状は悪化し、認知症まで確認されるようになってしまっていました。

そこで、三回のセッションで「体を動かすと気持ちいい。どんどん動かしたくなる」、「体を動かすと、体重も減って、どんどんやせられる」のような暗示を書き込みました。一回目の翌朝、ご主人は目覚めるとベッドから自分で上半身を起こしました。さらに、二回目、三回目と施術を重ねるうちに、杖を離すことはできませんが、自力でお手洗いにも行こうとするようになりました。

注目すべきは、単に自分で体を動かすようになっただけではなく、気難しかった言動も薄れ機嫌が良い日が続くようになり、さらに、会話もきちんと成立する場面が明らかに増えていったことです。

催眠技術で認知症を直接治療することは困難かもしれませんが、自発的な運動習慣を植え付けることで、脳の活性化を促すことの可能性はあるように思えます。