大量集団催眠? 催眠スピーチの倫理的な活用

催眠状態には、リラックスした状態からなる場合と、緊張が続いた状態からなる場合があります。前者は、脳内のノルアドレナリンの量をリラックスによって低下させ、与えられた情報から次の行動を判断する前頭連合野46野の機能を低下させることによります。後者は、大量の情報を与えることで前頭連合野46野が過負荷になった状態を作ってしまうことで成立しています。

日本催眠学会名誉会長であった藤本正雄氏は1933年にドイツで実際にヒトラーの演説を見て、それが集団催眠だったと喝破しています。主な手法は緊張系の催眠誘導であったことが知られています。その原理の核の部分をまとめたのが、私が電子書籍で出版した「催眠スピーチ術」です。

先日、この「催眠スピーチ術」を個別セッションで説明してきました。企業が研修などの形で、退職勧奨予定者を退職に向かわせたり、内定後の新卒者を入社させたくしたりした、各種の事例を紹介しました。すると、セッション受講者から、「そう言うことは、倫理的に問題があるのではないか」と指摘されました。

私は、サービスの倫理的な妥当性は、発注者が判断すべきだと思っています。ですので、企業からのそのような引き合いに関しては十分な説明を行なって、実施の可否を判断していただくことにしています。

数百人を対象にしても同時に催眠状態を実現できる“催眠スピーチ術”。他の催眠同様、きちんとかければ、対象者は、入れた暗示を自分で思考して決めたことと認識するようになります。それだけ、その結果の重大性に関して、発注者は慎重に判断すべきだと思っています。