否定語の暗示もバンバン入る! 「ピンクの象」の話の大誤解…

暗示の作り方の説明に、「無意識は、否定語を理解しない」と書かれていることがあります。「幻覚でおかしなものが見えること」を、英語で「ピンクの象が見える」と表現することがありますが、大抵の否定語の説明に出てくるのは、「ピンクの象を思い浮かべないで下さい」と言う暗示の事例です。

「ピンクの象を思い浮かべないで下さい」と暗示を入れても、ピンクの象を思い浮かべないようにする作業の中に、既にピンクの象の存在が認識されています。と言うことで、「ピンクの象を思い浮かべるな」と言う暗示は無効だと言う説明です。確かにこの事例はその通りです。

けれども「否定語が無効」と言うことではありません。変性意識状態に誘導して、「なぜだか分かりませんが、私が指を鳴らすと、テーブルの上にある両手が上がらなくなる。もう全然上がらない!」と言えば、手が上がらなくなります。これほど否定語を繰り返してもちゃんと入ります。

同様に、吉田かずお先生がよくやる健忘催眠実験の際の暗示も、否定語だらけです。

「だんだん頭がボーっとしてきて、もう何にも考えられない。面倒で面倒で、頭に何にも浮かんでこない。私が指を鳴らすと、自分の名前も分からなくなる。自分の名前が全く思い出せない。ハイ、言って御覧なさい。絶対に言えない!言って御覧なさい。絶対に言えない!」。
これで多くの人は自分の名前がどうしても思い出せなくなってしまいます。

つまり、否定語の問題ではなく、「無意識に一旦認識された言葉は、無かったことにできない」だけのことです。想起されたピンクの象の認識は否定できませんが、「否定する」意味の暗示を、無意識は間違いなく理解できるのです。