“やる気のスイッチ”は本当に存在するのか

自己啓発系の書籍が書店であふれ返っています。これほど「自分のやる気を出す本」があるのは、「やれないのは、その人間がやる気を出さないから」と言う社会的な認識が広まっているからだと思えます。そこには、社会や政治、企業の運営がうまく行かない理由を個人に転嫁する危険な構造が透かし見えます。いわゆる「自己責任論」です。

やる気はどうやったら湧くのか。その答えを、映画化もされた『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』という本の中で見つけました。著者の学習塾講師、坪田信貴氏は、お世辞にも成績が良いとは言えないような学生の指導におけるノウハウをふんだんに紹介しています。

「「やる気が出る」と「できる」の順番を間違えない。一般に、「やる気になる⇒やる⇒できるようになる」だと思われているが、全くの誤り。「やってみる⇒できる⇒やるきになる」が正解。まずは「できる」状態まで持っていくことが大事」。

人間を支配している適応的無意識が起こした行動に対して、感情が後からついて来るのは、よく知られています。「おかしいから笑う」のではなく、「笑うからおかしい」であるのは、この原理です。冒頭の「やれないのは、その人間がやる気を出さないから」の理屈も誤っていることが分かります。「やる気のスイッチ」は、単に「できるようになること」なのです。

この身も蓋もない「やる気のスイッチ」の他に、もう一つ“裏スイッチ”を催眠技術なら用意できます。無意識に命令を書き込み、まだできないことをできるように感じさせ、やる気を湧かせられます。やれない人の「やる気を湧かせないこと」を責めるよりも、催眠技術で「やる気のスイッチ」をバンバン入れてしまえば事足りるのです。