「ナイト・サイエンス」を使いこなす

ノーベル物理学賞を受賞した江崎玲於奈博士は、「ナイト・サイエンス」と言う言葉を作っています。「デイ・サイエンス」が論理と知識の科学を、「ナイト・サイエンス」は直感や感性の科学を意味する言葉として作られました。

最も効果的で簡便な自己催眠の方法は、就寝して眠りに落ちるまでの間に暗示を頭の中で反芻することです。これは覚醒状態から睡眠状態に移行する間に、誰しも必然的に変性意識状態を“経由”することから、可能になっている催眠技術です。睡眠状態直前でなくても、日中の心身の疲れが出てくると、夜にだるくボーっとした状態になることがよくあります。それは、弛緩法で誘導した結果の浅い変性意識状態と実質的に同じです。

変性意識状態では、意識の束縛なく身体や脳の働きを無意識に任せることができます。身体の方は有名な「フロー」や「ゾーン」の状態ですし、脳の方は無意識の直感的な高速多重並行処理が可能になるはずです。前者では事前の入念な反復練習が必要ですし、後者では十分な知識の事前インプットが必要です。それが無意識に拠って最大限に処理されて結果を生むのです。

合宿形式の研修の夜間のブレインストーミングなどで、普段出ることのない意見や発想が出やすい主な原因は、夜の時間帯には変性意識状態に自然になってしまい、無意識の支配が始まるからだと考えられます。江崎博士の言う「ナイト・サイエンス」もこのような状態で浮かぶ優れた着想や自由な発想を指しているのだと思われます。

ホンネを大胆に余すことなく書いてしまうので、夜にラブレターを書いてはいけないと言われます。無意識に思考を任せると、理性のタガが掛からないで、普段は心にしまってあった思いの丈があふれ出てしまうからなのでしょう。