19世紀、効果的な麻酔薬がなかった当時に外科手術を行なうと、肉体的精神的苦痛から術後の死亡率が非常に高かったと言います。当時、英国領だったインド・カルカッタで勤務していた外科医師スコット・エズデイルは、ヨーロッパ中に知られていたメスメリズムを用いて患者を知覚麻痺(アネステシア)にすることで、この問題を解決しようとしました。
エズデイルは3000例以上の催眠を用いた手術を行ない、術後の死亡率をそれ以前の50%から5%に下げたと言われています。さらに、その一例の或る男性の腫瘍摘出手術では、46.7キログラムもの腫瘍をとったのに、患者は完全に回復し、術中に全く痛みを感じなかったという驚くべき記録さえあります。
その後、インドにもエーテルやクロロホルムによる麻酔手法が伝わり、知覚麻痺(アネステシア)や無痛覚状態(アナルゲシア)を催眠で導くことはなくなりました。
しかし、近年、薬物による麻酔と異なり副作用の可能性が全くなく、コストがかからないことから、催眠技術によるペイン・リリーフ(痛みからの解放)が注目され、米国の医療センターなどでの実績も幾つも報告されるようになりました。火傷の専門病院での活用事例も多くあると言います。
このような催眠技術による痛みの抑制は、自己催眠で自分に対して行なうこともできます。副作用なく、コストもかからず、いつでもどこでもできる鎮痛。吉田かずお先生も、歯医者に行って「自己催眠で痛くならないようにしたので麻酔なしで治療できた」と仰っていたことがありますが、有効な鎮痛方法として、もっと認知されてよいものと、テレビで各種の鎮痛剤のコマーシャルを見るたびに思います。
※参考文献: 『催眠の謎…』 マイケル・ストリーター著
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