無意識によって創り出されている自分の外部世界

携帯電話やスマホのカメラでも数百万画素がある時代になりました。それに対して、人間の目の解像度は百万画素程度だと言われています。視界の広さなども合わせて考えると、かなり粗い映像しか捉えられていないことが想像できます。それでも、視力が正常な状態で見える画像は、通常、どこにもざらつきやボケがなく、十分な解像度があるように感じられます。

網膜から送られて来る低解像度の画像情報を、リアルで立体感ある画像に変換しているのは、脳の「経験値からきっとこんな様子になっているに違いない」という推測であると言う主旨が脳研究者の池谷裕二と小説家の中村うさぎの共著の『脳はこんなに悩ましい』で述べられています。つまり、「見えているもの」は実際には「見えているはずのもの」として脳が補った作り上げたものだということになり、説明の中では、存在しているかのように感じる「幻覚そのもの」とまで言っています。

同書では、同様に、色彩に関しても、人間の目には赤・青・緑のセンサーしかないため、本来はそれ以外の色を感知することはできないのに、黄色いものが見えるのは、脳が「こうであろう」と幻覚を作り出しているのだと説明しています。

この脳の働きは、無意識の働きそのものです。催眠技術の「感覚支配」において、見えているものを見えなくすることも、見えているものを実態とは違って認識するようにすることも、簡単に実現できます。それは、視覚などの外部からの刺激の認知が、実際に無意識の働きによって“作り出されているもの”であることに拠るのであろうことが分かるのです。