吊り橋効果 緊張系催眠事例の実際

吊り橋効果は、不安や恐怖を感じる場所で出会った人に対して、恋愛感情を抱きやすくなる現象としてよく知られています。その原理は、危険でドキドキする状態が恋をしてドキドキしている状態と同じなので、無意識がそれを恋愛状態と勘違いするからだと説明されていることがあります。

ドキドキ感を勘違いするなら、階段を駆け上がったりしても恋愛感情が湧くことになります。ドキドキ感の勘違いは一要素としてあり得る程度の理由だろうと、私は思っています。

人間は緊張によって変性意識状態になります。その精神状態で状況を共有できる異性と二人きりになれば、その異性の存在が深く無意識に書き込まれるはずです。緊張系催眠の原理で、ドキドキするしないに関係なく、恋愛感情以前に存在そのものが気になるはずです。実際に催眠誘導の「驚愕法」は心臓がドキドキするほどの驚きでなくても十分機能します。

私のレクチャーの人気テーマの『催眠ホレさせ術』では、こうした緊張状態で相手の女性に「僕と一緒なら大丈夫だよ」などと言葉で暗示を書き込むことで恋愛感情に結びつける仕組みにしています。元ネタの実験も「ドキドキ感勘違い説」を支持するのに十分ではないように思えます。

社会心理学者のドナルド・ダットンとアーサー・アロンは、18歳から35歳までの独身男性を集め、高さ70メートルの吊り橋と、揺れない橋の2か所で実験を行なっています。男性には橋を渡ってもらい、橋の中央で若い女性がアンケートをネタに突然話しかけて来るものです。「結果などに関心があるなら後日電話を下さい」と電話番号を女性が男性に教えた結果、吊り橋の方の男性は50%が電話をしてきて、揺れない橋の方は12.5%しか電話が来なかったと言います。

一般に吊り橋効果については、女性が恋愛感情を持つケースがイメージされていることが多いように思いますが、実験では男性が対象となっていました。これでは、女性担当者によるキャッチ・セールスそのものです。「ドキドキ感勘違い説」以前に、恋愛機会の期待ぐらいが精一杯の解釈で、恋愛感情の存在自体にも疑問が湧くように思えます。